補助金の活用

国土交通省の2つの補助制度(住宅向け/非住宅向け)

戸建住宅やマンション等のRC造共同住宅について、長期にわたり住み続けられるための優良な住宅を普及させるために、国土交通省により「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が2009年(平成21年)6月から施行されました。この法律は、“つくっては壊す”スクラップ&ビルド型の社会から“いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う”ストック活用型の社会への転換を目的としています。“長期優良住宅”とは、長期にわたり良好な状態で使用できる構造や設備となっている住宅のことで、基準にかなう建築計画やリフォーム計画、維持保全計画を作成して所管行政庁に申請し、基準に適合して施工した場合は税制の優遇処置や工事費に対する補助金の交付を受けられます。新築の長期優良住宅に関する認定制度は2009年6月から開始されていますが、既存の木造住宅やRC造共同住宅(マンション)のリフォームを行ない、長期優良住宅の認定を行なって補助金を交付する制度長期優良住宅化リフォーム推進事業は、2016年(平成28年)4月より開始されています。

一方、オフィスビルやホテル、病院、店舗等の非住宅建物に関する補助金交付制度は、2015年(平成27年)7月に国土交通省により公布された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(略称:建築物省エネ法)に基づいた「既存建築物省エネ化推進事業」による既存非住宅建物の補助制度があります。既存建築物の省エネ改修等を促進するため、民間事業者等が行なう省エネ改修工事に対し、国が事業の実施に要する費用の一部を支援する制度です。非住宅の省エネ改修工事に加えてバリアフリー改修を行なう場合は、バリアフリー改修工事についても補助金が交付されています。

以下、最もストックが多く、今後いろいろな問題が生じる可能性のある長期経年マンションの大規模修繕工事実施時に、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を利用してリニューアル工事を実施する利点について解説いたします。特に、マンションのコンクリート躯体の外壁を断熱材で覆う“外断熱化工事”と“二重窓化やペアガラス化”をリニューアル工事に加える事で、“温度と湿度の変化が少なく、冬暖かく夏涼しい健康的な室内居住環境”と“マンションの長寿命化”の実現を、補助金の導入活用によって大規模修繕の当初予算の範囲内で実現する事が期待できます。

 

 

マンション大規模修繕工事で長期優良住宅化リフォーム推進事業補助金を利用し、外断熱化工事を実施するメリット

① マンション大規模修繕工事費(リニューアル工事費)のうち、1/3程度を補助金でまかなう事が期待できます。

② 事業者登録を行なった施工業者が補助金を申請して受領するため、管理組合側の申請事務が増えることはなく、当初のマンション大規模修繕工事費の予算内でおさめる事が期待できます。

③ 外断熱化工事を実施する事で、施工後はコンクリート躯体の温度変化がごく少なくなり、コンクリートの劣化を抑えることができます。そのため、マンション寿命が大幅に延び、資産価値減少を抑える事が出来る上に、その後の大規模修繕工事費用を抑えることが可能となります。

④ 外断熱化工事を加えても、補助金交付の基準を満たしていれば比較的容易に補助金を受けられることが期待できます。

 

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金が認められるための条件(RC造共同住宅)

① 1981年(昭和56年)6月1日以降の新耐震基準を満足した検査済証か建築確認済証による共同住宅であることが必要。

② 1戸当たり40㎡以上の住戸が対象。

③ 原則として、マンション管理組合が発注する大規模修繕工事やリフォーム工事が対象。

④ “評価基準”に見合う工事内容と見積りを、国土交通省傘下の建築研究所が管掌する評価機関(評価室事務局)に申請し、評価機関が評価後に補助金交付額を決定。

⑤ “評価基準”は木造住宅、RC造共同住宅のそれぞれに適用される基準が細かく分かれており、RC造共同住宅については、事前にコンクリートの劣化状況等の現況検査(インスペクション)を行ない、外断熱化工事を含めてどの様な工事が必要かを決定して見積を実施する事が必要(インスペクション費用も補助金対象)。

⑥ 事業タイプは、以下の3種類(1.の評価基準型が一般的)。

1.評価基準型:4つの性能項目のうち、1項目以上評価基準に適合が必要。補助限度額は、100万円/戸。施工業者が事業者登録を行なえば、補助金申請前に工事開始可能。

2.認定長期優良住宅型:全ての性能項目で認定基準に適合。補助限度額は200万円/戸。

3.高度省エネルギー型:全ての性能項目で認定基準に適合し、かつ、一次エネルギー消費量が省エネ基準比で20%削減が必要。補助限度額は250万円/戸。

⑦ 補助金受領のためには、当該年度の12月までに工事終了が原則。

⑧ 補助金の申請では、「通年申請タイプ」と「事前採択タイプ」があり、「通年申請タイプ」は交付申請期間内に随時申請可能。

 

 

(国土交通省 住宅局 住宅生産課の説明会資料より)

 

 

評価基準(4種類)の概要(RC造共同住宅)

<必須項目>

1.劣化対策:コンクリートの劣化状況や鉄筋の錆発生 → インスペクションによる確認

2.耐震性 :新耐震基準を満たしている事の確認

<選択項目> (3,4のいずれかを行う)

3.省エネ性 :構造体、外壁、開口部の断熱性能向上(外壁の外断熱化工事、玄関断熱ドア設置、開口部既存サッシ交換(ペアガラス化等))、高効率給湯器設置、太陽熱利用システム設置ほかの工事実施。

4.維持管理:専用配管と共用配管の構造が評価基準を満足する事。

(※補助金対象工事としては、屋上防水工事、バルコニーや廊下の修繕、換気設備設置等も対象となります。)

 

 

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金を用いたマンション大規模修繕の実施事例

NPO法人日本外断熱協会(JAEI)正会員の(株)髙屋設計環境デザインルームが、実際に長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金を用いたマンション大規模修繕実施事例を紹介します。

※参照ホームページ:(株)髙屋設計 省エネ改修支援センター:http://kaisyu-eco.com/hojokin-guide/

 

石川県野々市市 MAC野々市コート大規模修繕工事(工事期間 2018年6月~11月)

・RC造7階建、築後27年経過のマンション(延床面積 8,889㎡、99戸)の大規模修繕工事で、総工事費 約1億5千万円のうちの1/3程を国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金でまかなっています。

・補助金対象工事(補助対象の特定工事)は、以下の通りです。

1)外壁外断熱化工事(ポリスチレンフォーム(厚さ6cm)湿式工法及びガリバリウム仕上げ乾式工法)

2)真空ペアガラスへの取り換え工事

3)共用部分のLED化工事

4)共用部分の廊下及びバルコニー床の防水工事

5)エレベーター改修工事

6)その他外壁クラック補修工事・塗装工事など

 

 

 

MAC野々市コート:着工前           改修後

 

MAC野々市コート改修後の住戸室内温度と湿度

居室の温度は20℃前後で安定しており、空調していない部屋との温度差は3℃以内で、住戸全体が快適な環境となっています。居室の湿度も40%~60%で室外の湿度の影響は少なく、快適な室内の居住環境を作り出しています。

 

 

その他のマンション外断熱改修工事に利用できる補助金制度

・戸建て住宅、RC造共同住宅のリフォームにおける経済産業省管轄の補助金で、「断熱リノベ」と「次世代建材」の補助金があります。マンション外断熱化工事を含む大規模修繕時に利用する場合は、国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金と比較すると、補助金範囲が限られ、補助額は少なくなることが多いと予想されます。一戸建ての中古住宅や中古マンションを購入して、個人がリフォームを行なう場合に使いやすい補助金と考えられます。

※参照ホームページ:https://sii.or.jp/moe_material30/(一般社団法人環境共創イニシアチブ)

 

・2019年10月に予定されている消費税率引上げに備え、良質な住宅ストックのための新たな支援制度として、「次世代住宅ポイント」が設けられます。窓や壁、天井、床の断熱改修や高効率な設備機器への交換、バリアフリー改修、家事負担を軽減する機器の設置により、様々な商品等と交換できるポイントが発行されます。

※参照ホームページ:http://www.mlit.go.jp/common/001267870.pdf(国土交通省ホームページ)

 

・この他、各都道府県や主要都市において、それぞれ住宅リフォームの促進を図るための補助金制度を設けています。マンション大規模修繕工事で利用する場合には、管理組合が直接自治体に申請しなければならない場合が多く、国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金と比較すると利用しづらい面があるので、注意が必要です。

※参照ホームページ:http://www.j-reform.com/reform-support/(一般社団法人住宅リフォーム推進協議会)