Q7:密着工法と通気層工法の違いは?

A7:「『外断熱』からはじまるマンション選び!」(NPO法人日本外断熱協会理事長 堀内正純著)と「これからの外断熱住宅」(田中辰明お茶の水女子大学名誉教授、お茶の水女子大学 柚本玲博士共著)の2冊は、外断熱に関して理解を深めるために優れた本ですが、いずれの書籍にも外断熱建物の持つ優れた特徴として

①部屋の温度が大きく変動しない

②建物全体に温度ムラが生じにくい

③建物の耐久性が向上する

④結露やカビの被害が少なくなる

⑤建物の遮音性が飛躍的に向上する

⑥建物が汚れにくい

が挙げられております。 その理由は両書をご覧頂くとして、ここでは外断熱建物はどんな構造になっているか、どんな種類があってそれぞれどのような特徴があるのか、について工法を技術的に見てみたいと思います。

外断熱とは文字通り鉄筋コンクリート造(RC造)建物の躯体の外側に断熱材を張る工法です。その断熱材の施工の仕方で大きく「通気層のない工法」と「通気層のある工法」に分類できます。ここでいう通気層とは建物内つまり、居住空間で発生した例えば厨房の蒸気、冷暖房機器からの蒸気、観葉植物の水やりからくる蒸気、これらの蒸気は建物の内外の蒸気の持つ圧力差で躯体中を通過します。建物内で発生した蒸気を通気層を通して逃がしてやろうというのが「通気層のある工法」の意味です。

それでは「通気層のない工法」とはどんな工法でしょう。「通気層のない工法」は別名「密着工法」とも呼ばれます。躯体の外側に断熱材を密着して貼り付けますがその断熱材をモルタルなどで貼り付ける場合は「湿式密着工法」といいます。また、断熱材を金具の利用で躯体に取り付ける工法は「乾式密着工法」といいます。使用される断熱材はEPS断熱材(ビーズ法ポリスチレンフォーム)などで、その外側には強度確保のために網目状のグラスファイバーメッシュを貼り、その上に樹脂モルタルが塗られて仕上げの塗装が行われます。EPSは、水は通さないが水蒸気は通します。その性質を利用して室内の水蒸気はこもることなく室外に排出されます。その例を図―1に示します。

図―1密着工法の例(資料Sto Japan(株)提供)

次に「通気層のある工法」とはどんな工法でしょうか。この工法は別名「乾式通気層工法」とよばれます。断熱材にはグラスウールやロックウールなど繊維系の材料が使用されます。この断熱材コンクリートの外側に止められその外側に約20mmの通気層が確保されます。この通気層はコンクリートから発生する水蒸気を排出する作用と雨水を下に落とす作用があります。その例を図―2に示します。

図―2通気層工法の例(硝子繊維協会提供)

 

 

それでは「通気層のない工法」と「通気層のある工法」の特徴を見てみましょう。

 

・「通気層のない工法」(密着工法)のメリット・デメリット

【メリット】

・シンプルな工法のため施工コストを抑えられる。

・既存のビルの改修に適している。

・EPSは加工が容易なため自由なデザイン性に富む。

【デメリット】

・外装面の水蒸気処理や断熱材の厚さに注意すること。

 

・「通気層のある工法」のメリット・デメリット

【メリット】

・繊維系断熱材はコストが安くリサイクル材料で地球に優しい。

・繊維系断熱材は耐火性がある。

・外装材が自由に選べ、高級感が出しやすい。

【デメリット】

・断熱材を躯体に止めるため手間がかかりコストが高い。

 

これまで外断熱の工法や特徴についてのみ述べてきましたが、他に大切な留意点がいくつかあります。

・戸、窓、サッシ周りの気密性を確保すること

・ベランダなどは熱橋対策を講じること

・気密が高くなるので換気設備を設置すること

・躯体の熱容量が大きいので夏場の日射をさえぎる工夫をすること

 

以上述べてきた工法の特徴や留意点をよく理解し、自分に最適な選択(どんな居住環境を望むか)をすることが大切です。NPO法人 日本外断熱協会には、外断熱工法での施工を行なう施工会社や、外断熱住宅等の建物やマンションの外断熱改修を行なう設計事務所が会員として所属しているため、いつでもご相談に応じられます。