多摩ニュータウン内の稲城市に位置するビスタセーレ向陽台団地は、総戸数160戸で築28年目に国交省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を受けて2020年から約8ヶ月間で外断熱改修工事を実施した事例です。既にサッシのカバー工法によるペアガラス交換工事と屋上の外断熱改修工事を2020年より前に実施していたため、補助金対象工事が少なかったこともあって、補助金支給額は１戸当たり78万円程でした。特徴としては、1階部分のみタイル貼りであったため、湿式外断熱工法による外断熱工事施工後の1階部分は断熱材の上にタイル貼り施工として仕上げています。

　2021年５月には、一般社団法人マンション計画修繕施工協会により「第11回マンションクリエイティブリフォーム賞」を受賞しています。当時の理事長であった坂田氏が受賞に伴って管理組合のビジョンについて文章を寄せていましたので、以下にご紹介いたします。

****************************************************************************************

【ビスタセーレ向陽台団地管理組合のビジョンについて】（記：坂田英督氏）

　2005年、第1回大規模修繕の頃から鉄筋コンクリート造の建物の寿命について調べ、正しく造って正しく維持管理すれば 100 年以上あると確信するに至りました。

　次に、「生き残るマンション」の条件を考えると、一定の住戸面積、耐震性、バリアフリー、立地であろうと思われます。それらは時間が証明するのを待つしかありませんが、当団地は、終の棲家としてまた次世代も快適に住めるマンションとしての潜在価値を持つと結論付けました。

　では、潜在価値の顕在化のために何をするかと言うと、「自分が心から住み続けたいと思うマンションにすること」であり、ハード面の整備として断熱性能向上が核心と考えました（構造耐力や遮音性はある程度満足しており、特に不足を感じるのが断熱性能）。

　具体化に当たっては、補助金が見込める内にと2015年に窓の更新を行い、一部の棟で雨漏りがあったことから、2019 年に屋上の再断熱防水を実施し、前回の大規模修繕工事から15年経過した2020年、外壁と床下の外断熱を含む大規模修繕工事を実施したものです。

　住戸の断熱化が完了してみての感想ですが、「もう断熱性能の低い住宅には住めない」の一言です。元々転出の少ない団地で、築28年経過して転出は 24％弱（160 戸中 1.4 戸/年未満）ですが、益々終の棲家として認識されるのではないかと思っています。

　なお、2021 年は屋外環境を抜本的に見直す工事に着手する予定です。

　「資産価値」は人が評価するものですが、それには囚われず、自分達が快適に過ごすことだけを旨に今後もハード面に限らず、ソフト面も含めてできることをやっていく所存です。

　 （※ 一社）マンション計画修繕施工協会のホームページから引用させていただきました。）

****************************************************************************************

＜ビスタセーレ向陽台団地 第２回大規模修繕工事概要＞

・所　在　地：東京都稲城市向陽台6-19

・規　　模  ：総戸数160戸（RC造６階建５棟、5階建2棟、全棟エレベーター付）

・経過年数　：28年、完成1993年（住宅・都市整備公団の分譲）

・大規模修繕工事発注者：ビスタセーレ向陽台団地管理組合

・設計監理　：エコリノ協議会（合意形成コンサル、外断熱改修を含む大規模修繕の設計・監理、　　　

　　　　　　　補助金業務、減税業務を実施）

・施　　工　：株式会社一ノ瀬建創（当NPOの賛助会員）

・外断熱施工：(株)高本コーポレーション（当NPOの正会員）

・工　　期  ：2020年6月 ～ 2021年2月

・改修内容  ：外断熱改修工事、防水工事、玄関扉改修

　（※ サッシペアガラス交換工事：2015年に施工済、屋上断熱防水工事：2019年に施工済）

＜工事金額及び補助金関係の概要＞

・大規模修繕工事費(追加工事費込)　　　462,700千円　（2,891千円／戸）

・補助金支給額                　　　 125,000千円　  （781千円／戸）

※ ビスタセーレ向陽台団地の外断熱改修の記事等をご希望の方はメール下さい。(ﾒｰﾙｱﾄﾞﾚｽ： info@sotodan-jaei.org )

※ 外断熱改修工事の写真提供：(株)A＆Cサポート金子勲一級建築士事務所

 

 

 

　

１階住戸の外断熱化改修工事(湿式外断熱工法で、１階のみタイル貼り仕上げ)