日本の共同住宅が「内断熱工法」から解放される日は近づいている。

タイトル:日本の共同住宅が「内断熱工法」から解放される日は近づいている。

 この文言は月刊 建築仕上技術2021-12 131頁に掲載された 【私のはんせい記】~「改修設計」事始め~建築家 三木 哲氏の末文です。

氏は戦後、大量に建設された集合住宅の設計手法の中に西洋と全く異なる設計手法があった。それが鉄筋コンクリート躯体の室内側に断熱する「内断熱工法」であった。その原因は1965(昭和40)年に日本住宅協会が発行した「公共住宅標準詳細設計図集」という図面集があるがこの中では建物外皮の断熱工法は一貫して内断熱工法が採用されている。おそらく、当時の断熱の執筆者は鉄筋コンクリート建築を総合的に判断することができない空調学者でなかったかと思われる。と述べている。

一方、外断熱工法は、室内側に結露が発生せず、建物躯体の耐久性に優れる。さらに地球温暖化とCO2削減の要請を受けて国交省は「長期優良住宅ルフォーム推進事業」に建物外皮の外断熱改修を積極的に助成している。と述べ、タイトルの文言で結んでいます。

三木 哲 (有)共同設計・五月社一級建築士事務所顧問。              1943年生まれ。URD・建築再生総合共同組合・管理建築士建築家がメンテナンスを手掛けることなど考えられなかった時代 から「改修に」携わり、40年以上にわたって同分野を開拓し続けてきたパイオニア。

 

Web録画セミナー「マンション・団地の大規模修繕における外断熱化について」をご視聴ください

国土交通省の関連団体のマンション再生協議会からの依頼で、下記のWebセミナー録画を行ないました。

「マンション・団地の大規模修繕における外断熱化について」という題名で、現在下記のマンション再生協議会のホームページから視聴できます

マンション再生協議会のホームページを開いていただき、「2021Webセミナー ~法改正・カーボンニュートラル~」をクリックして、【第3部】を視聴ください(http://m-saisei.info/info/202111/からでも開けます。)。

約54分の内容で、2022年1月31日まで視聴可能です。説明用のスライドはダウンロード可能です。

マンション再生協議会のUR  http://m-saisei.info/

【第3部】

マンション・団地の大規模修繕における外断熱化について ~課題と対応~

①外断熱と内断熱

②外断熱改修とは

③日本とヨーロッパの外断熱改修について

④補助金利用外断熱改修事例

⑤補助金活用について

山岡淳一郎氏の記事「カーボンニュートラル 外断熱が定番へ」をお読みください

毎月発行されている「マンションタイムズ」((株)不動産経済研究所 発行)に、当協会正会員でノンフィクション作家の山岡淳一郎氏が毎回執筆している「住み継ぐ力 生き抜く力」第29回の連載記事で、「カーボンニュートラル 外断熱が定番へ」という外断熱に関する力強い記事が掲載されました。

日本外断熱協会と致しましても、今後の活動に非常にためになる心強い内容で、大変ありがたく思っております。

山岡淳一郎氏の記事をお読みいただき、外断熱への理解をさらに深めていただければと思います。

(※ 当協会ホームページに記事を掲載する許可を「マンションタイムズ」編集部から頂いております。)

山岡氏記事「カーボンニュートラル 外断熱が定番へ」

6月4日に総会と勉強会を開催しました

・コロナウィルス感染の影響で開催が遅れていた総会を、会場参加とZOOMによるWEB参加の方式で開催いたしました。令和2年度(2020年度)活動内容と決算を報告のほか、令和3年度(2021年度)の予算と事業計画について報告しました。

① 昨年度実施の外断熱化改修工事見学会に多数の参加者を得て、外断熱に対する理解が広められました。

② マンション計画修繕施工協会が主催するマンションクリエイテイブリフォーム賞を当協会会員の会社が施工に関わった案件で受賞されました。

◇ ビスタセーレ向陽台団地大規模修繕工事:(株)一ノ瀬建創、(株)高本コーポレーション

◇ 鶴川6丁目団地大規模修繕工事:建装工業株式会社

 

・今年度の事業計画については、昨年度に引き続いて外断熱化改修工事を施工中のマンションの視察を、今年の秋に予定しております。また、外断熱に係るコンサルタントや相談窓口を強化することも引き続いて行なっていきます。

 

・6月4日には勉強会も開催いたしました。堀内理事長から「まもなく20周年:外断熱のNPOとは」と題して講演を行ないました。2022年11月に日本外断熱協会が登記後20周年を迎える事を念頭に置き、外断熱化実施は、“①省エネ、②耐久性・資産性、③健康・快適性”に寄与する事を改めて強調した内容でした。

 

 

6月2日に公明党国土交通部会で外断熱の有効性の勉強会を行ないました

本年6月2日に衆議院第一会館の会議室において開催された公明党国土交通部会において、「日本における外断熱工法の現状と課題~脱炭素社会における建築物の外断熱工法の有用性についてから~」というテーマで勉強会を実施しました。当協会の堀内理事長及び夏目常務理事から外断熱工法の有効性(冷暖房の消費電力節減の省エネや建物の長寿命化等)の説明を講演資料を用いて行ない、経年マンションや病院などの既存及び新築のRC造建物の外断熱化が、今後の脱炭素化に向けて是非とも必要であることを訴えました。

講演後、太田昭宏元国土交通大臣からは、「我が家も夏は暑くて過ごしにくい。外断熱化を行なったお宅に伺ったとき、こんなに外断熱化した家が過ごしやすいのかと実感した。これからはエネルギーと環境問題である。本日は脱炭素社会における建築物の外断熱化の有効性について話を聞いて良く理解できたので、今後の政策に活かしていきたい。」との力強いお言葉を頂きました。

 

(注)上記の講演資料はPDFで保管しています。ご入り用の方は、外断熱協会事務所までメール(info@sotodan-jaei.org)にてお問い合わせください。

 

外断熱工法による大規模修繕工事がマンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しました

昨年(2020年)見学会を行なった「ビスタセーレ向陽台団地」の大規模修繕工事が、(一社)マンション計画修繕施工協会(https://www.mks-as.net/company/)の第11回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しました。施工者の(株)一ノ瀬建創(日本外断熱協会賛助会員)と見学会や講習会でお世話になりましたビスタセーレ向陽台団地管理組合及び設計監理者のエコリノ協議会が受賞されました。受賞おめでとうございます。

ビスタセーレ向陽台団地の外断熱工法による工事は、日本外断熱協会正会員の(株)高本コーポレーションが担当され、外断熱工事の結露防止など細かい配慮や、納まり等について配慮した提案力や創意工夫が評価されました。

同じく外断熱改修工事を行なった「鶴川6丁目団地」についても、第11回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しています。こちらも、日本外断熱協会賛助会員の建装工業(株)が大規模修繕工事の元請施工を行ない、外断熱工法による工事は(株)高本コーポレーションが行なっています。

ビスタセーレ向陽台団地大規模修繕工事の概要と受賞者の声、及び鶴川6丁目団地大規模修繕工事の概要と受賞者の声を、(一社)マンション計画修繕施工協会のホームページの以下のPDF資料を転載してご紹介いたします。

 

資料-1:ビスタセーレ向陽台 概要

資料-2:ビスタセーレ向陽台 受賞者の声

資料-3:鶴川6丁目団地概要

資料-4:鶴川6丁目団地 受賞者の声

外断熱改修見学会を実施しました

2020年6月から外壁の外断熱改修工事を実施中のビスタセーレ向陽台団地の現場見学会を実施しました。昨年10月20日付で当協会ホームページトピックスにおいて見学会参加の募集を行ないましたが、10月31日から2週間おきに合計4回(10/31、11/14、11/28、12/12)行なった見学会に、自治体、マンション管理組合、マンション管理会社、設計者他、合計49名の方が参加されました。外断熱化工法によるマンション大規模改修を今後検討したいという意向の管理組合もいくつか出てきましたので、日本外断熱協会にとっては大変有効な見学会でありました。

今回の見学会は、設計監理を担当したエコリノ協議会(多摩NTの居住環境の向上を目指すNPO団体)と共催の形をとり、エコリノ協議会の改修工事設計担当で当協会の正会員でもある金子氏と、外断熱工事担当の(株)高本コーポレーションの高本社長(当協会の正会員で副理事長)及び改修工事元請の(株)一ノ瀬建創(当協会賛助会員)の現場所長に丁寧に現場の説明をしていただきました。

この工事は、省エネ改修工事として15年前から外断熱の研究を開始し、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を受ける事を大前提として、2019年に省エネ改修工事の設計を開始し、2020年6月から9ヶ月間という短い工期で工事を行なっています。

 今後外断熱化を考えていらっしゃるマンション管理組合や設計者の方々、改修工事に携わる施工者の方々のために、今回の外断熱改修工事の特色と実施後の効果を以下に示します。

〇各住戸の居住環境の大幅な改善(“夏涼しく冬暖かい環境”と“カビや結露の排除”)

〇大規模修繕周期の大幅な延長と大規模修繕工事費の削減(見込)

〇管理組合の改修工事に対する事務の低減(補助金の申請と受領は施工会社が実施)

〇補助金の有効活用(①改修工事費の約1/3を補助金利用 ②上限1億円をクリアー)

〇既存タイル貼外装部分のローコスト外断熱化+タイル貼工事の実施

以上、わからない点や質問等がある場合には、メール(info@sotodan-jaei.org)にてNPO法人日本外断熱協会(JAEI)に問い合わせください。

※参考資料として、「ビスタセーレ向陽台団地:外断熱化工事実施までの経過概要」を用意しております。入手を希望される方は、メール(info@sotodan-jaei.org)にてNPO法人日本外断熱協会(JAEI)に申込みください。その際は、氏名と連絡先電話をお知らせください。無料にて参考資料ファイルをお送りします。

年末年始休暇のお知らせ

読者の皆様へ

令和2年はコロナで明けコロナで終わる不安定な年でした。そうした中でしたがNPOは皆様のご協力で確実な事業を展開してまいりました。アドバイザー講習や外断熱改修現場見学などは見るべき成果であります。令和3年も引き続き厳しい年になりそうですが皆様のご協力で乗り切りたいと思います。来年もよろしくお願い申し上げます。

なお、年末年始は12/25 仕事納め

12/28~1/3 年末年始休暇

1/4 初出

といたします。

皆様良いお年をお迎え下さい。

 

 

 

【その8】外断熱協会とは~その歴史と役割

その8

冒頭触れたように私たちの「外断熱協会」が発足して18年を迎えた。当時は建築関係者ですら外断熱を“がいだんねつ”と呼称するほど外断熱は知られてもいなかったし、施工例も微々たるものであった。内断熱と外断熱の違いも選択の要素となることはなく、それは省エネ、室内熱環境、躯体の耐久性、健康に及ぼす影響などは余り重要視されなかったからで前述の通りである。何よりも行政側の無理解が大きいともいえる。しかし札幌市の例に見られるように市の方針として市営の建築物は外断熱とすることを決めた例もある。

私たちはこれからも一層外断熱の優位性を広く知ってもらうために努力を重ねていく決意であり、既に外断熱マンションに住まわれている方々の声を伝えていくことを大事にしていきたいと思っている。更に外断熱改修の現場見学会などを通して、改修期を迎えたマンションにもその多くの優位性を理解してもらう取り組みを進めていく。

長い間ご愛読ありがとうございました。

(執筆者 NPO法人 日本外断熱協会 専務理事 宮坂幸伸)

【コラムその7】外断熱とは~その歴史と役割

その7

わが国の住宅の省エネルギーというと住宅そのものの省エネルギー策は殆どなく、太陽電池の使用、効率性の良い電気製品の導入などが語られる。ドイツでは住宅そのものの省エネルギー化が図られ住宅の年間エネルギー消費量をわかるようにしたエネルギーパスを作成し、住宅の新築、改築に際してはこれを発注者に渡さねばならない仕組みがこのエネルギーパスである。賃貸住宅でもオーナーは賃貸に際して提示することが義務付けられている。

こうしたことは省エネ化、住宅の高付加価値を求めるには外断熱の普及がこれからの時代の課題解決に如何に役立っているかを更に知ってもらうことが重要である。例えば我が国のエネルギー消費量は欧米に比して多いわけではないが、それは暖房で例えれば一室一室の暖房機だからである。そしてこれは部屋の温度差を生じさせヒートショックを招く危険性と隣り合っているのだ。外断熱は今更言うまでもないことだが、建物そのものがコートを羽織ったようなもの、外気温の影響を受けないので一度温める、冷やすで躯体の蓄熱性が活き、その効果は持続し、部屋間の温度差も生じないのである。

欧米諸国がこうした取り組みを進めているのにわが国では未だに内断熱工法が大半である。

住生活基本法は5年ごとに見直すこととなっている。2015年5月27日付の日経新聞の社説では「住宅政策の重点を新規物件の建設から、既存住宅の流通へとしっかり移すべきだろう」とし、「しっかり補修した住宅は取引価格が上がるようにしたい」「新築物件を過度に優遇するのは時代に合わない。リフォーム投資を促し何世代にもわたって一つの住宅で暮らすことができる社会に変えたい」とある。わが協会でもマンションの外断熱改修も積極的に取り組んでいく。