6月2日に公明党国土交通部会で外断熱の有効性の勉強会を行ないました

本年6月2日に衆議院第一会館の会議室において開催された公明党国土交通部会において、「日本における外断熱工法の現状と課題~脱炭素社会における建築物の外断熱工法の有用性についてから~」というテーマで勉強会を実施しました。当協会の堀内理事長及び夏目常務理事から外断熱工法の有効性(冷暖房の消費電力節減の省エネや建物の長寿命化等)の説明を講演資料を用いて行ない、経年マンションや病院などの既存及び新築のRC造建物の外断熱化が、今後の脱炭素化に向けて是非とも必要であることを訴えました。

講演後、太田昭宏元国土交通大臣からは、「我が家も夏は暑くて過ごしにくい。外断熱化を行なったお宅に伺ったとき、こんなに外断熱化した家が過ごしやすいのかと実感した。これからはエネルギーと環境問題である。本日は脱炭素社会における建築物の外断熱化の有効性について話を聞いて良く理解できたので、今後の政策に活かしていきたい。」との力強いお言葉を頂きました。

 

(注)上記の講演資料はPDFで保管しています。ご入り用の方は、外断熱協会事務所までメール(info@sotodan-jaei.org)にてお問い合わせください。

 

外断熱工法による大規模修繕工事がマンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しました

昨年(2020年)見学会を行なった「ビスタセーレ向陽台団地」の大規模修繕工事が、(一社)マンション計画修繕施工協会(https://www.mks-as.net/company/)の第11回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しました。施工者の(株)一ノ瀬建創(日本外断熱協会賛助会員)と見学会や講習会でお世話になりましたビスタセーレ向陽台団地管理組合及び設計監理者のエコリノ協議会が受賞されました。受賞おめでとうございます。

ビスタセーレ向陽台団地の外断熱工法による工事は、日本外断熱協会正会員の(株)高本コーポレーションが担当され、外断熱工事の結露防止など細かい配慮や、納まり等について配慮した提案力や創意工夫が評価されました。

同じく外断熱改修工事を行なった「鶴川6丁目団地」についても、第11回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しています。こちらも、日本外断熱協会賛助会員の建装工業(株)が大規模修繕工事の元請施工を行ない、外断熱工法による工事は(株)高本コーポレーションが行なっています。

ビスタセーレ向陽台団地大規模修繕工事の概要と受賞者の声、及び鶴川6丁目団地大規模修繕工事の概要と受賞者の声を、(一社)マンション計画修繕施工協会のホームページの以下のPDF資料を転載してご紹介いたします。

 

資料-1:ビスタセーレ向陽台 概要

資料-2:ビスタセーレ向陽台 受賞者の声

資料-3:鶴川6丁目団地概要

資料-4:鶴川6丁目団地 受賞者の声

外断熱改修見学会を実施しました

2020年6月から外壁の外断熱改修工事を実施中のビスタセーレ向陽台団地の現場見学会を実施しました。昨年10月20日付で当協会ホームページトピックスにおいて見学会参加の募集を行ないましたが、10月31日から2週間おきに合計4回(10/31、11/14、11/28、12/12)行なった見学会に、自治体、マンション管理組合、マンション管理会社、設計者他、合計49名の方が参加されました。外断熱化工法によるマンション大規模改修を今後検討したいという意向の管理組合もいくつか出てきましたので、日本外断熱協会にとっては大変有効な見学会でありました。

今回の見学会は、設計監理を担当したエコリノ協議会(多摩NTの居住環境の向上を目指すNPO団体)と共催の形をとり、エコリノ協議会の改修工事設計担当で当協会の正会員でもある金子氏と、外断熱工事担当の(株)高本コーポレーションの高本社長(当協会の正会員で副理事長)及び改修工事元請の(株)一ノ瀬建創(当協会賛助会員)の現場所長に丁寧に現場の説明をしていただきました。

この工事は、省エネ改修工事として15年前から外断熱の研究を開始し、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を受ける事を大前提として、2019年に省エネ改修工事の設計を開始し、2020年6月から9ヶ月間という短い工期で工事を行なっています。

 今後外断熱化を考えていらっしゃるマンション管理組合や設計者の方々、改修工事に携わる施工者の方々のために、今回の外断熱改修工事の特色と実施後の効果を以下に示します。

〇各住戸の居住環境の大幅な改善(“夏涼しく冬暖かい環境”と“カビや結露の排除”)

〇大規模修繕周期の大幅な延長と大規模修繕工事費の削減(見込)

〇管理組合の改修工事に対する事務の低減(補助金の申請と受領は施工会社が実施)

〇補助金の有効活用(①改修工事費の約1/3を補助金利用 ②上限1億円をクリアー)

〇既存タイル貼外装部分のローコスト外断熱化+タイル貼工事の実施

以上、わからない点や質問等がある場合には、メール(info@sotodan-jaei.org)にてNPO法人日本外断熱協会(JAEI)に問い合わせください。

※参考資料として、「ビスタセーレ向陽台団地:外断熱化工事実施までの経過概要」を用意しております。入手を希望される方は、メール(info@sotodan-jaei.org)にてNPO法人日本外断熱協会(JAEI)に申込みください。その際は、氏名と連絡先電話をお知らせください。無料にて参考資料ファイルをお送りします。

年末年始休暇のお知らせ

読者の皆様へ

令和2年はコロナで明けコロナで終わる不安定な年でした。そうした中でしたがNPOは皆様のご協力で確実な事業を展開してまいりました。アドバイザー講習や外断熱改修現場見学などは見るべき成果であります。令和3年も引き続き厳しい年になりそうですが皆様のご協力で乗り切りたいと思います。来年もよろしくお願い申し上げます。

なお、年末年始は12/25 仕事納め

12/28~1/3 年末年始休暇

1/4 初出

といたします。

皆様良いお年をお迎え下さい。

 

 

 

【その8】外断熱協会とは~その歴史と役割

その8

冒頭触れたように私たちの「外断熱協会」が発足して18年を迎えた。当時は建築関係者ですら外断熱を“がいだんねつ”と呼称するほど外断熱は知られてもいなかったし、施工例も微々たるものであった。内断熱と外断熱の違いも選択の要素となることはなく、それは省エネ、室内熱環境、躯体の耐久性、健康に及ぼす影響などは余り重要視されなかったからで前述の通りである。何よりも行政側の無理解が大きいともいえる。しかし札幌市の例に見られるように市の方針として市営の建築物は外断熱とすることを決めた例もある。

私たちはこれからも一層外断熱の優位性を広く知ってもらうために努力を重ねていく決意であり、既に外断熱マンションに住まわれている方々の声を伝えていくことを大事にしていきたいと思っている。更に外断熱改修の現場見学会などを通して、改修期を迎えたマンションにもその多くの優位性を理解してもらう取り組みを進めていく。

長い間ご愛読ありがとうございました。

(執筆者 NPO法人 日本外断熱協会 専務理事 宮坂幸伸)

【コラムその7】外断熱とは~その歴史と役割

その7

わが国の住宅の省エネルギーというと住宅そのものの省エネルギー策は殆どなく、太陽電池の使用、効率性の良い電気製品の導入などが語られる。ドイツでは住宅そのものの省エネルギー化が図られ住宅の年間エネルギー消費量をわかるようにしたエネルギーパスを作成し、住宅の新築、改築に際してはこれを発注者に渡さねばならない仕組みがこのエネルギーパスである。賃貸住宅でもオーナーは賃貸に際して提示することが義務付けられている。

こうしたことは省エネ化、住宅の高付加価値を求めるには外断熱の普及がこれからの時代の課題解決に如何に役立っているかを更に知ってもらうことが重要である。例えば我が国のエネルギー消費量は欧米に比して多いわけではないが、それは暖房で例えれば一室一室の暖房機だからである。そしてこれは部屋の温度差を生じさせヒートショックを招く危険性と隣り合っているのだ。外断熱は今更言うまでもないことだが、建物そのものがコートを羽織ったようなもの、外気温の影響を受けないので一度温める、冷やすで躯体の蓄熱性が活き、その効果は持続し、部屋間の温度差も生じないのである。

欧米諸国がこうした取り組みを進めているのにわが国では未だに内断熱工法が大半である。

住生活基本法は5年ごとに見直すこととなっている。2015年5月27日付の日経新聞の社説では「住宅政策の重点を新規物件の建設から、既存住宅の流通へとしっかり移すべきだろう」とし、「しっかり補修した住宅は取引価格が上がるようにしたい」「新築物件を過度に優遇するのは時代に合わない。リフォーム投資を促し何世代にもわたって一つの住宅で暮らすことができる社会に変えたい」とある。わが協会でもマンションの外断熱改修も積極的に取り組んでいく。

外断熱改修現場見学会のご案内

NPO法人日本外断熱協会では、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を利用して、経年マンションの大規模修繕工事で “夏涼しく、冬暖かい室内環境を創り、エアコン等の電力使用量を減らし、躯体寿命を延ばす”事のできる外断熱化工事を実施するためのお手伝いを現在行なっております。つきましては、外断熱に関心をお持ちのマンション管理組合の方を対象に、現在稲城市で外断熱改修工事を施工中のビスタセーレ向陽台の現場見学会を、9月下旬から12月の期間で計画し、下記の要領で募集しております.

■外断熱改修見学会 外断熱協会(再印刷圧縮データ)

□  対象マンション: ビスタセーレ向陽台(7棟、160戸、1993年竣工)

京王相模原線「稲城」駅より徒歩12~15分、又はタクシー利用

□ 日  程: 10月31日(土)、11月14日(土)、11月28日(土)、12月12日(土)

□ 見学時間: 13:30~15:00

□ 集合場所: ビスタセーレ向陽台 工事現場事務所前

□ 定  員: 5名単位で案内を予定

ビスタセーレ向陽台の現場見学会に参加ご希望の管理組合の方は、NPO日本外断熱協会のメールアドレス(info@sotodan-jaei.org)にて、①管理組合名、②責任者名、③連絡先(メールアドレス及び電話番号)、④人数(5名以内)、⑤見学希望時期、をお知らせください。

現場見学日程については、個別にご相談のうえ決定したいと存じます。

今回の見学会申し込み対象者は、マンション管理組合もしくは設計事務所の方を優先いたします。施工会社の方のお申込みはご遠慮ください。

 

第10回 外断熱アドバイザー講習会のお知らせ

令和2年11月11日(水)に下記の内容で外断熱アドバイザー講習会を開催いたします。

講習会は、以下の①、②、③の三種類です。

  • 外断熱アドバイザー『更新講習』: 10:00~15:40までで、考査試験はありません。

第十回外断熱アドバイザー講習会申込書(更新講習)

過去に外断熱アドバイザー(建築・マネージメント)資格を有している会員が対象です。再入会で『更新講習』受講が可能です。  更新受講費用:10,000円

  • 外断熱アドバイザー『新規講習』: 10:00~17:00までで、考査試験を行います。

第十回外断熱アドバイザー講習会申込書(新規受講)

初めて受講される会員を対象にした『新規講習』です。

会員でない方は、入会することで受講できます。 受講及び試験費用:20,000円

  • 外断熱アドバイザー『体験講習』: 10:00~12:00

第十回外断熱アドバイザー講習会申込書(体験受講2h)

マンション管理組合、設計士、賃貸マンションオーナーなどの皆様を対象にした『体験講習』(2時間)です。    受講費用:1,000円

□主 催:特定非営利活動法人日本外断熱協会(JAEI)

□開催日時:令和2年11月11日(水) 9時30分開場10時開会17時閉会

□会場:〒105-0011 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館B3-6会議室

□定員:30名(先着順 但し、①、②は外断熱協会の会員向け、③はどなたでも受講可能)

□スケジュール:

09:30 開場受付

10:00~10:10  受講上の注意事項の説明

10:10~10:30 日本外断熱協会の活動と歴史(20 分):JAEI 堀内理事長

10:30~12:00 外断熱工法についてその理論と背景(外断熱読本)(90 分)

12:00~13:00 (昼食・休憩)

13:00~13:10 午後の部の説明

13:10~13:50 日本の外断熱システム~湿式外断熱工法(40 分):

佐々木 隆 JAEI常務理事 StoJapan(株)代表取締役

13:50~14:30 日本の外断熱システム~乾式通気層工法(40 分)

岡田 幸三 (株)ツヅキ 開発本部副本部長

14:30~15:10 外断熱改修事例と補助金活用について(40 分)

小島 隆  ハウスタイルズ株式会社 代表取締役

15:10~15:40  外断熱建物と火災~建築ファサード燃えひろがり抑制研究会の活動(30 分)

高本 修一 JAEI副理事長 ㈱高本コーポレーション代表取締役

16:10~16:40 新規受講者向け考査試験(30 分)

なお、申込希望の方は、メール(info@sotodan-jaei.org)またはファックス(03-3436-0678)にて、JAEI事務局あてにお申し込みください。

また、日本外断熱協会では稲城市で外断熱化工事を含む大規模改修工事を施工中のビスタセーレ向陽台の現場見学会を、マンション管理組合、設計事務所等を対象に、9月下旬から12月の期間で募集中です(ホームページのトピックス案内記事を参照下さい)。

【コラムその6】外断熱協会とは~その歴史と役割

その6

この建物の寿命ということ観点で少し考えてみたい。野澤千絵という方が三年ほど前「老いる家、崩れる街 住宅過剰社会の到来」という本を出された。

要点は「私たちは『人口減少社会』なのに『住宅過剰社会』という不思議な国に住んでいます」とした上で、「住宅過剰社会とは世帯数を大幅に超えた住宅が既にあり、空き家が右上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼き畑的に拡げながら住宅を大量に作り続ける社会のことです」と定義している。日本の世帯総数は約5245万世帯、現在国内にすでに建っている住宅は2013年度で6063万戸、住宅のストック数は16%も過剰という数字もあげられている。2015年のデータでは人口1000人当たりの新築住宅着工戸数は日本ではここ20年間、2014年ではイギリスの2.8倍、アメリカの2.3倍、フランスの1.3倍、欧米に比べて新築住宅を大量につくり続けている国ということが出来るのである。そうした住宅市場の問題は様々な要因があるが、中古住宅市場が約14.7%と欧米に比して極めて少ないことに視点を当てることが必要である。中古住宅市場が未成熟なことが新築住宅中心の市場を招いている一要因でもある。本書によればこのまま空き家になった住宅の除去や住宅用途以外への有効活用が進まなければ20年後には空き家率は30.2%、三軒に一軒は空き家になると試算を示している。マンションも質の悪い建物、管理体制の不備などでスラム化も現実に生じている。 住宅、建物の高付加価値化の必要性はこうした観点からも急がれねばならない。外断熱工法によるコンクリート躯体建物は居住空間の温度差解消など様々な高付加価値を持っている。ドイツでは2008年からエネルギーパスが義務化された。

【コラムその5】外断熱協会とは~その歴史と役割

その5

少々話が飛ぶが、2004年8月から9月にかけて実施された「スウエーデン・ドイツ団地再生と外断熱の旅」について触れたい。

この旅はストックホルムでは都市計画局、住宅公社への訪問、そしてイエテボリでのハンスエイクの無暖房住宅に関する講義、チェルマッシュ工科大学訪問、ハンブルグでのSTO社との懇談、サイロのビジネスビル化など多くの改修、新築現場の視察が行われた旅だったが、最も印象に残るのはハンスエイクの「無暖房住宅」に関する講義であった。実際に彼が設計した無暖房住宅を訪れ、滞在体験もしたが、このパッシブハウスに初めて接した経験は後の木造住宅における無暖房を考える上で大変参考になったと言える。

この旅では

①断熱が新築、改修を問わず如何に一般化しているか、

②工法については乾式、湿式いずれであれ最も対象に相応しい工法が併用も含めて採られていること、

③景観、街並み住み心地といった「文化」の問題への関心、を更に実感させられたと言える。

そして「建物の寿命」ということに対する訪問先の確固たる考え方を知ったことである。

訪問先すべての方から「原則として建物は壊さない」との考え方が示されたのだ。短期のスクラップ&ビルドが当然視されてきた戦後のわが国の建築事情との乖離は余りに大きいものがあるが、改修を含む高耐久化、そのための外断熱工法の普及は今後のわが国の建築の向かうべき方向を示していると感じさせてくれたのである。

ハンスエイクはその後2005年、私たちNPOの招待で日本を訪れ長野、京都、東京、札幌などで無暖房住宅セミナーを行ったが断熱材の厚さに対する日本の建築関係者の関心が薄い中で、建築物理に裏打ちされた断熱材の厚さによる断熱性能の高さが木造住宅であっても無暖房住宅とすることを(高気密、熱交換を伴って)可能としたというハンスエイクの実証に裏打ちされた話は断熱材の厚さの意味を再確認させたと言える。